2005年12月29日

★Tomocolumn 03「愛すべきハシナガ」★

11_02.jpg小笠原のイルカといえば、スイムの対象となるミナミハンドウイルカをまず連想しがちですが、どっこい、ハシナガイルカを忘れるわけにはいきません。実をいうと、海の中で通り過ぎただけのミナミハンドウよりも、船のすぐそばで波乗りやジャンプを見せたハシナガに感激しました、とおっしゃるかたも、案外多くいらっしゃいます。
なによりも、ハシナガはほっそりとスマートで、なかなか美形のイルカです。それに比べるとミナミハンドウはずんぐりして傷だらけで、愛嬌こそありますが、美しいとはちょっと言い難いかも・・・。
ハシナガの細長く上品なくちばし、くっきりと黒いアイラインが走る眼、黒眼がちの瞳は賢そうにきらめき、体色は背中からお腹にかけて濃いグレー・淡いグレー・白とお洒落に三色に分かれます。興奮するとその白いお腹がピンク色に染まって、ちょっと色っぽい。そして、美人にありがちなシャイな性格でいらっしゃる。
11_04.jpgそのくせ、気取っておすまししているわけではなく、舳先の波に乗ってぐいぐいスピードを上げて泳ぐときの、存外の逞しさ。海上に全身を躍らせるきりもみジャンプの鮮やかさ。高々と見事なジャンプに思わず拍手すると、負けじと子イルカも真似します。ちっちゃ〜いベビーが、お母さんにぴったりくっついて泳ぎ、ぴょんと飛び上がっては呼吸するさまが、それはそれは愛らしい。夕方になると、群れ全体でアクティブに跳びながらオレンジ色の夕日を目指して沖へどんどん泳いでいく、その後ろ姿のカッコ良さ。
こうして並べてると、その時々のハシナガを思い出してわくわくしちゃいます。そうだわ、そういえば、ワタシの「イルカ開眼」も、ミナミハンドウではなくてハシナガだったのだわ。
11_01.jpgまだイルカツアーもない十ウン年前のこと、ハシナガイルカたちがダイビングボートの船首波に乗りに来たのです。急いで舳先に立って見下ろすと、1頭のイルカが泳ぎながらくるっと仰向けになり、じーっとこちらを見上げるではありませんか。うわ、眼と眼が合っちゃった!と驚くその耳に、「ピピ〜、ピ〜」というイルカの声が。きゃ、ワタシに話しかけてる!お返事しなくちゃ!・・・でも、なんて答えたらいいの!?あー、ワタシはイルカ語が話せない!!せっかく、イルカがこっちを見てるのに・・・!せっかくせっかく、話しかけてくれてるのに・・・!
11_05.jpg結局、どう答えたらいいのかわからずにお返事できずじまいだったけど、それでも、野生のイルカと見つめ合ったひとときの感激は大きく、港へ着いてからも、宿へ戻っても、いえいえ、東京に帰ってからも、胸の中にはずーっとそのときの喜びがほこほこと暖まっていました。あまりにも嬉しくもったいなくて、人に喋ることもできないくらい。それを思い出すだけで幸せな気分になれちゃう。それが、ワタシがイルカにはまったきっかけの出会いでした。
そんなふうに、会うたびに私たちを喜ばせてくれる魅力的なハシナガですが、近年は遭遇率が低くなっています。以前は、いくつかの湾を回れば必ずと言っていいほど会うことができたのですけどね。やっと出会ったハシナガが、船を嫌がってすぐ潜ったり逃げたりすることも増えてます。
どうやら、ハシナガにスイムする船が増えたために、かなり神経質になってるようです。ウォッチよりスイムのほうが彼らに与える影響はより大きくなりますし、追えば追うほど逃げるのは美人の常ですよね。あ、美人じゃなくてもか。
もちろん、状況によってはハシナガを水中ウォッチできるときもあります。ただ、そのあたりの状況をあまり考慮せずにとにかくスイムを優先するばかりに、船上からのウォッチさえしにくくなっているのは残念なことです。
こんな美しいイルカたちを、この小笠原の海で当たり前のように見続けていきたいところなのですが。



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2005年09月10日

★Tomocolumn 02「賑やかな海 」★

小笠原の海中公園で泳ぐとき、カラフルな魚の群に驚かされて眼ばかり奪われがちですが、耳を澄ませると、様々な音も聞こえてきます。ブダイがサンゴを囓るガリッという音、テッポウエビがハサミを鳴らすパチパチという音、ササヨが吐き戻してるブフッという音などなど。
02_01.jpgイルカのいる海ではもっと賑やかです。陸ほど視界のきかない海の中で、彼らはレーダーのように音を発しては、その跳ね返りで物体との距離を測ってますし、また他のイルカとのコミュニケーションにも声を使います。
なので、海に滑り込んだ瞬間、イルカの姿は見えないけれど声だけが聞こえてくる、なんてことがよくあります。お、あっちから聞こえる、近づいて来るぞ、来るぞ、あ、見えた!というときの喜び。または、彼らが泳ぎ去ったあと、いつまでも余韻のように声だけが響いてることもあります。
彼らは、なんていろいろな声を出していることでしょう。「チーチーピーピー」とさえずる音(ホイッスル)、「カツカツ、ジジジ」と響く音(クリックス)、「バチッ、バチッ」と鋭い音(バーストパルス)。
02_02.jpg遊び盛りのヤングイルカが水中でヒトの周りをぐるぐる回りながら「チーピーチーピー」と声を出してるのは、とても楽しそうです。若雄の群れがしきりに絡み合いながら「バチバチバチ!」と音をぶつけてるのは、喧嘩かもしれません。子イルカがひとりで途方にくれたようにあちこち見回しながら、「ピ〜〜・・・ピ〜〜・・・」と鳴いてるのは、もしかしたら迷子になったのでしょうか。それでも、私たち人間が聞こえるのは、彼らの出してる音のほんの一部だそうです。もっともっと私たちの聞こえない音域の声も出してるとか。
私も、彼らを真似て、泳ぎながらよくイルカたちに話しかけてます。「遊ぼうよ!」「ねえ、待って〜」「久しぶりだね、元気?」。横に並んで一緒に泳いでるイルカから「チーピーピー?」と話しかけてくれることもしばしばあり、こっちからも「チーピーピー?」と同じように答えます。ま、相手が何を言ってるのかわからないし、相手も、何言ってるんだろ、コイツは、と思ってるかもしれないけど、とりあえず、敵意はないのよ、仲良くしようよ、という私なりの意思表示です。
02_05.jpgそういえば、こんなこともありました。ある日、遊びで海に出て、弟島西で10頭くらいのイルカの群れに出会ったのです。ひとりで海に入り、イルカたちの群に混じって泳ぎました。ふと気が付くと、イルカたちがぐるっと私を取り囲んでるではありませんか。しかもそれぞれが水中に縦になって(横ではなく!)、こちらをじーっと見つめてます。そして、一斉におしゃべりを始めたのです!これまでまったく聞いたことのない声です。「●×△★※▼○■?」「□◇▲○×☆♪▽!」まるっきりヒトそっくりのイントネーションで、何頭ものイルカたちがしきりに討論しています。一瞬、私は、「こいつら、実はイルカの皮をかぶった宇宙人だったのかー!」と、結構マジで思いましたね。「ここまでついてきたこの地球人をどうする?」と話してるのかと。まさに、イルカたちは口角沫を飛ばしてるのですもの・・・が、もちろん私がそのまま宇宙へ拉致されることもなく、やがて話し合いの結論が出た(?)イルカたちは私を置いて泳ぎ去り、あとには、衝撃さめやらぬ私がボーゼンとその後ろ姿を見送っていたのでした。
この出来事は数年も前のことですが、それ以後も、このときのような「お喋り」をきくのはとてもまれです。どうやら、イルカたちが非常に興奮したときに出してるような気がします。
というわけで、まだまだ知らない声を出すこともあるかもしれないし、もしかしたらいずれ日本語を話すこともあるかもしれないので(!)、皆さんも、海に入ったらぜひ耳を澄ませてみてくださいね。




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2005年06月02日

★Tomocolumn 01「美しい海の生きものたち」★

Sea-Tacのツアーを始めてから10ウン年、愛艇ダンシングホエールの上で、強い日差しを浴び、風に吹かれて、潮を受け、おかげで過ぎた歳月は私の肌にしっかりとその跡を刻んでくれてます。このシワシミソバカスをどうしてくれるの〜といいたいし、都会暮らしさえしていればもっと美しくいられたはず(・・・!?)とクヤシイ思いもするけれど(あ、それは無理なんて鼻で笑わないで)、じゃあ、この10ウン年を、都会でお洒落に過ごせたはずの年月と交換したいかといえば、やはり、それは否定せざるを得ないのです。
09-01.jpg賑やかな町中で産まれ育った私が、大人になってから移り住んだ小笠原で、天候や自然に、人間はとても敵わないと知りました。ヒト社会でそれはそれはつっぱらかって生きてたのだけど、自然を前にしたら謙虚にならざるを得ませんでした。
そして思いがけないクジライルカとの出逢い、鯨類以外の海の生きものとの出逢い、自然好きのお客様たちとの出逢い。それらは、この年月に得た私の大切な宝物です。クジラの潮吹きは噴水のように二またに分かれると思っていたド素人の私が、小笠原で初めて見たザトウのかたちや行動に心から驚き、惹かれ、夢中になりました。一生に一度でいいから野生のイルカに遭ってみたいと夢見ていた私が、実際に遭ったら、
もっともっと好きになりました。
09-02.jpgこんな素敵な生きものたちを観光客の皆様にきちんと案内したいとSea-Tacを始めて、10年以上が経ち、それでもなお、私自身がまだクジラやイルカに全然飽きていません。今も、海で彼らに会うたびに驚き、惹かれ、夢中になってます。「もう見尽くした」「もう見飽きた」、そんな日は果たしてくるのでしょうか。
つくづく思うに、野生の彼らは、なんてそれぞれが美しいのでしょうか。種によって姿は異なりますけど、そのどれもが実に実に美しく、機能的です。ザトウの優雅に翻る長い胸ビレも、マッコウのぴたっと胴にはめ込まれる丸い胸ビレも、どちらも見事です。ハシナガのほっそりした体もミナミハンドウのずんぐりした体も、海の中で自在に泳ぐさまには惚れ惚れします。マダライルカのハイジャンプにはわくわくさせられるし、コビレゴンドウの堂々とした背ビレの群には圧倒されます。
09-05.jpg小笠原の明るい日差しのもと、青い海で彼らの肌はきらきらと輝きます。かと思うと、餌を追うときの獰猛ともいえるさまには、野生の生きものへの畏敬の念を抱きます。マンタもアオウミガメもカツオドリも、知れば知るほど、愛さずにはいられません。サカナもサンゴも、みな、なんて複雑で綺麗な色とかたちをしてるのでしょう。
この上は、私のこともその海の仲間に入れてくれて、彼らが「そうそう、海の生きものは皆美しいのだよ、キミもその仲間さ」なぁんていってくれると嬉しいのだけど、うーん、無理だろうなぁ。ヒトはどうしたって海ではあまり美しくない、陸の生きものなのでした。それでも、私たちが海にお邪魔したとき、彼らの仲間にはなれずとも、ちょっと変わった友だちくらいにはなれればいいなと願わずにはいられない私です。