2008年10月12日

★Tomocolumn13「外洋域を彩る鯨類」★

madarajp.jpgザトウウォッチングツアーやドルフィンスイムツアーでは父島列島沿岸域を走りますが、近年行われてるマッコウクジラを対象とするツアーでは、父島列島から10キロ以上離れた、水深1000メートルを越える外洋域まで行きます。
そこでは、ときに、沿岸域にはいない珍しい鯨類に会うこともあります。とりわけ初期は、どのクジラとも全く予期せぬ出逢いで、初めて見たときにはそれこそ何というクジラなのか、果たしてどういう行動をとるのかも知らず、驚きの連続でした。
例えば、マッコウを探してるとき初めて会った、小さめのクジラの群れ。10頭くらいいるでしょうか、相手も興味津々で、ボートに寄ってきます。私たちは、彼らがどんな姿をしてるのか、船上から目をこらします。うち1頭が、水面上に頭をぬっと出しました。その顔は・・・、「オバQじゃん!!(・・・古くてスミマセン)」。
kazuha.jpg丸いつるっとした頭(毛は3本なかったけど)、白くてぶ厚い唇、白い縁どりのなかにきょろっとした大きな眼。まるっきり、マンガのオバQです。
同乗してたOWA研究員の同意を得て、水中に入ってみます。海の中、彼らは少し離れてこちらをじーっと見つめています。眼が目立ち、白い唇は口角が上がって笑ってるよう。やがて、その笑顔のまま、彼らはすーっと青の深みに潜っていきました。
島に戻ってから、急いで図鑑を調べてみると、お!これだ、これだ!「ユメゴンドウ」という名前でした。「発見されてから1世紀も実在が確認されなかったため、夢のようなゴンドウの意味でつけられた」とか。まあ、そんな珍しいクジラに会えちゃったのね。小笠原では初確認だそうで、改めて、わくわくドキドキさせられます。
madara.jpgまた別のとき、イルカを見つけて海に入ると、その顔が、見慣れてるミナミハンドウともハシナガとも違っていて、ビックリ。いつものイルカたちはクチバシの付けねに分かれ目がはっきりしてるのに、このイルカはまるで、顔の先をペンチでぐーーーっと引っ張ってそのままになっちゃった、みたい。細長く尖ってて、分かれ目もありません。体には、ボツボツと白い傷のような汚れのようなものがたくさんついてます。相手のイルカも、水中で縦になって、不思議そうにこちらを観察してます。互いに、「変な顔!」って思ってるところでしょう。これも、戻ってから図鑑で調べると、「シワハイルカ」というイルカでした。「歯にシワがあるから」だそうで、さすがに歯まではわかりませんでしたが、とにかく、とても印象的な顔つきでした。
他の日の、遠くからジャンプしつつ近付いてくるイルカの大群。船首波に乗る姿はミナミハンドウよりもシャープで、ハシナガよりも大きい。クチバシの先は白く、日を浴びて胴の水玉模様がきらきら光ります。ジャンプの高さ、泳ぐ速さ、数の多さに圧倒され、見てるだけで楽しくなっちゃう彼らは、「マダライルカ」でした。
kobire.jpgまたは、丸々こんもりと盛り上がった背ビレが特徴的で、波を蹴立てるように泳ぐ、重量感のある「コビレゴンドウ」。
ユメゴンドウに似てるけど、頭の先が角張っていて、もっと神経質な「カズハゴンドウ」。
かと思うと、もっと細長くて、大きさのわりに華奢な印象の「オキゴンドウ」。
ミナミハンドウよりひと回りでかく、迫力もひとしおの「ハンドウイルカ」。
シャイで、決して船には寄らないけど、お腹をピンク色に染めながら、まとまってぴょんぴょん波の上をはね回る、きれいな「サラワクイルカ」。
白かったり赤かったり茶色がかったり、体色に個体差のある「アカボウクジラ」。
警戒してすぐ去ったくせに、また、改めて様子を見にやってきた「コブハクジラ」。
船の周りをまるでワープしてるように、こちらと思えばもうあちら、猛烈な速度で泳ぎ回る、アグレッシブな「シャチ」。
sarawaku.jpgどれもこれも、会うたびに大きな驚きと喜びがありました。図鑑や文献で姿や生態を確かめては、自分たちの心のノートに記録していきます。
外洋で遭遇するのは、クジライルカに限りません。「オサガメ」は、ボート上から見ていたMAKOTOに言わせれば、泳いで近付いた私の頭の先からフィンの先までと同じ大きさだったそうで、小笠原海域で写真に撮られたのは初めてでした。
「ダイオウイカ」の5メートルにもなる触腕や2メートル近い外套膜は、回収して、研究者に供してます。
いっぽう、「カンテンダコ」は、持ち上げようとするとぐずぐず崩れてしまいます。
何に会うか解らない外洋域、何に会っても不思議はない外洋域。さて、次はどんな珍しい生きものとの出逢いがあるか、まだまだ楽しみと謎の尽きない海域です。
posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 外洋域を彩る鯨類

2008年05月29日

★Tomocolumn 12「マッコウウォッチのあけぼの」★

20_05.jpg今、小笠原でホエールウォッチというと対象はザトウクジラとマッコウクジラが当たり前になってますが、マッコウはザトウよりウォッチ歴が新しいです。
88年から始まったザトウウォッチに続いて、果たして他の鯨種のウォッチが可能かどうか、OWAを中心に調査が行われてました。最初に調べられたのは、捕鯨の対象になっていたニタリクジラ。でも彼らの生息域は父島から日帰りでは行けないくらい遠く、ツアーは成り立たないと判明しました。
次に候補となったのが、マッコウクジラです。彼らのウォッチツアーの可能性を探るため、何度も何度も調査が行われました。Sea-Tacでは、これらの調査にたいへん積極的に(何しろ、スタッフ自身が見たい一心ですもの)協力してました。
20_02.jpgそれにしても、いったいどうやってマッコウを探せばいいのか。誰も見たことがないので、文献と首っ引きで方法を模索しました。水深1000メートル以上の海域にいるとわかり、そのあたりをとにかく走り回ります。ブローらしきものを、探して、探して、探して。数名の調査員が交代で海上に目をこらします。ゴンドウを見たりマダライルカに会ったりするけど、何日たっても、マッコウにはなかなか会えません。
そんな私たちが、初めてマッコウクジラを見つけたときの感激といったら!「あれ!ブローじゃないか!」「お!そうだそうだ、きっとブローだ!」「あ、本当に斜めに上がってる・・・!!」。ザトウほど高くなく、でも確かに斜め45度の角度で上がるブロー。近づいて見たマッコウは、なるほど、鼻の穴が左前にひとつだけ開いてるではないですか!ザトウとは違って体の幅が狭いから、水面上に現れる部分が細くて電柱みたいなこと、いったん浮上すると何回も何十回もブローすること、潜ってしまうと30分も1時間も出てこないこと。初めて知る何もかもが、驚きです。
20_01.jpg水中にマイクを入れてみると、聞こえてくるのは・・・??? 何、この音は?何かの機械??カチカチという音は、ザトウのソングとはまったく違います。でも、ひとりが「そういえば、マッコウの出す音はクリックというらしい。これがそうなのではないか?」といいだし、他のメンバーは、へーえ!と感嘆しきり。こんな音を生きものが出すのか・・・と、半信半疑でもあります。
相手のマッコウも、私たちのボートに驚き、興味津々でした。たぶん、これまでこの海域を走るのは漁船や貨物船ばかりで、10メートルくらいの船が、しかも近くで停まるなんて経験はなかったのでしょう。代わる代わる、船をチェックにやってきます。水面上に丸い頭を突き出しては、あっちに向けたりこっちに向けたり、音をぶつけて調べてます。調べられてる私たちは、その黒く丸い頭に喜んだり、音を当てられてちょっと緊張したり。また、その大きな体を横にして、船の周りを泳いでその目でこちらを見上げてます。まさに図鑑で見るマッコウクジラの四角い全身が、水面下にはっきりと観察できます。身体の表面には、深いしわが何本も走っています。そのうち、好奇心の強い一頭が、ボートの後ろのステップに体をこすりつけてきました。私たちは、デッキの上からその体をぺたぺたと触れちゃいます。
20_04.jpgこの時期の、ヒトとマッコウとの、お互いに驚きと感動を伴った交歓の楽しさは忘れられません。マッコウたちも、私たちとの遭遇を大いに面白がっていたはずです。決してコンスタントには会えないぶん、彼らに逢えたときの喜びは格別で、その一挙手一投足 、じゃない、一挙ヒレ一投ヒレにいちいち、感嘆、喜び、興奮したものです。
ある日など、海に架かる虹の下をくぐって(ように感じた)行った先の海域で、めくるめくマッコウクジラとの出会いがあり、また帰りに虹をくぐったとき、ああ、あれは夢の中の出来事で、父島に戻ったらカメラの中のフィルムは煙と化すのではないかしら、と半ば本気で思ったものでした。
そんな試行錯誤と観察の日々を重ね、初期のマッコウ遭遇率は30%以下でしたが、独自にマッコウを探し続けたSea-Tacが、父島南東海域にあるマッコウポイントを確認したあと、多くのショップがマッコウツアーを始めました。今では、ごく普通にマッコウウォッチが行われ、とりわけ秋の遭遇率は高いです。
でも、ツアーが増えるに従って、マッコウたちはボートへの興味を失い、生息域も次第に沖へ動いています。つくづく、クジラと私たちは大きく影響し合ってると感じます。この先のマッコウと私たちの関係がどうなるか、はじめの頃の感動を忘れずに、注意深く観察し続けていくつもりです。



2008年02月27日

★Tomocolumn 11「マンタの舞」★

19_03.jpg小笠原の海で、クジラ・イルカに次いで人気があるのはマンタ(オニイトマキエイ)でしょうか。
春には、二見湾の中で採餌してる姿をよく見かけます。口を大きく開けて体もぷっくりふくれあがり、水面上に盛り上がってます。餌を食べるのに夢中で、船が近づいても逃げません。舳先のすぐ前で、じっくり観察できます。
夏から秋は、岸近くの水面下にホバリングしてるのを見付けます。水にそっと入った私たちに気付くと、ひっくり返ってこちらを見上げます。光を受けて、白いお腹が輝きます。大きくヒレを羽ばたかせて悠々と泳ぐさまは、まるで水中を飛んでるよう。その優美さに見とれてしまいます。静かに静かに、海の深みに消えていくさまには、溜息が出ます。
でも、彼らも、いつでもこんなふうに鷹揚に泳いでるわけではありません。
19_04.jpgある夏の日、穏やかな入江で、ときならぬ波を見つけました。なんだろうと近付くと、なんと、1尾のマンタがもう1尾のマンタを追いかけているのです。水中の動きがあまりに早いため、水面に引き波が立ちます。海に入ると、すごいスピードでマンタが来ると思いきや、横を通過、その後をもう1尾のマンタが猛烈に追い上げてます。どうやら、逃げてるのが雌、追ってるのが雄です。あっという間に通過する2尾を見送ると、また、Uターンしてこちらにやってきます。どちらのマンタもすっかり目が吊り上がってます。口ビレは丸められて、白黒の棒状です。雌は、むしろ私たちの陰に逃げ込もうとします。雄はそれを追いかけざまに、「邪魔だ!!」とばかりにひときわ大きくヒレをびゅん!と振り下ろします。ひえぇ〜★※▽×☆!と、私たちは慌てます。何度目かには、苛立った雄が、向きを変えてあきらかにこちら目指して襲いかかってきました。19_02.jpg「お前らのせいでうまくいかないじゃないか!」と、その眼は血走ってます(に見えた)。この距離では避けきれない!と、私は小さく体を丸めてやり過ごそうとした、そのフィンにヒレが当たった!! いよいよ凶暴になるマンタにさすがに身の危険を感じて、這々の体で船に逃げこみました。
こんなマンタチェイスを、その後もたまに見つけることがあります。ときに、刺激しないよう注意しながら水中に入ってみるのですが、いつも、イライラしてる雄に八つ当たりされます。逃げる雌のほうは私たちの横をちゃんとすり抜けてくれるのに、雄は、まっしぐらにこちらに向かってきます。逃げ場がなくて水面上に跳び上がったこともあるし(スゴイでしょ)、やむなくぶつかっちゃった人もいます(チョットだけね)。
19_05.jpgまた、別の日のチェイス。やはり目付きがイッちゃってる雄が必死に逃げる雌を猛追してます。2尾が通過すると、水面はざざざっと波立ち、水中は泡で白く濁ります。逃げる。追う。まだ、逃げる。まだまだ、追う。
と、彼らの動きが停まった。・・・よく見ると。
水中で、2尾が縦に重なってます。上の雄が雌のヒレを口にくわえて、雌はややうなだれて、動きません。雄の両ビレだけが、力強く水をかいてます。まるでオルゴールの上の人形のように、2尾が揃って同じところでゆっくりと回転してます。何回も、何回も、くるーりくるーりと回ります。その動きの、なんて優しく、そして美しいこと。くるーり、くるーり。ゆったり、柔らかく。くるーり、くるーり。息をつめて見ている私の耳に、音楽が聞こえてきそうです。
19_01.jpgやがてしばらくすると、回転が停まり、ふっと2尾がほどけました。雄がくわえていた雌のヒレを離し、雌がそっと試すように、ヒレを動かし始めます。次第に、しっかり動かして泳いでいきます。雄は、ちょっと疲れたように、ゆっくりと、雌とは異なる方向へ泳ぎ去っていきました。チェイスで見せてたあの狂おしいほどの激しさは跡形もなく、穏やかで落ち着いたそれぞれの退場でした。
それにしても、いきものの中で、こんなにも美しい交尾シーンがあるとは。そして、鯨類ではないマンタにも、時に応じていろいろな顔があるのだと、つくづく感じ入ったのでした。



posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | マンタの舞

2007年10月31日

★Tomocolumn 10「北の果てで感じた温暖化」★

18_02.jpg6月上旬、北極圏のバフィン島に行ってきました。ホッキョククジラとイッカクとベルーガに会う旅です。彼らの姿かたちはとても印象的でしたが、彼らと同じように強く印象に残ったのが、現地のハードな環境と著しい温暖化の影響でした。
バフィン島の北、凍った海上のキャンプで2週間を過ごします。氷が割れて水路ができる時期で、そこを通るクジラを待つのです。
出迎えてくれたガイドのイヌイットたちは、私たちとそっくりの顔をしたモンゴロイドですが、真っ黒に日に焼け、深く刻まれたシワのせいで年齢がわかりにくいです。でも、たった数日を過ごすうちに、私たちの顔もみるみる黒く、そしてシワだらけになりました。すでに小笠原で日焼けの下地ができてると多寡をくくっていたけど、北極の紫外線は半端ではありません。日焼け止めをべた18_04.jpgべた塗っても、焼けていきます。誰もが、塗り忘れた鼻の下(穴のあるところ)の皮が剥けてぼろぼろです。どの顔も、日々、シワが深くなっていきます。鏡はないけど、手で触れる自分の顔はごわごわしてます。
敵(?)は、紫外線だけではありません。温暖化の影響で、例年の冬は零下50度になるのに、今年は零下30度にしかならなかったとのこと。20度の差は、なんて大きいのでしょう。そのため氷が割れるのも早くなるだろうと、実は、ツアーの日程を予定より1週間早めましたが、それでも間に合いませんでした。氷の割れ目はすでに大きく広がり、クジラたちははるか沖を通過していくのでした。
キャンプを設営している氷も、予想外の暖かさに解けはじめました。テントの中には水が溜まってきます。キャンプ地のうしろは、もともと海岸であるところの崖なのですが、その上の雪も解けて、凍った海に流れ込む滝ができてしまいました。18_03.jpgその水量は日ごとに増え、不安も募ります。足下の氷が白から水色に変わり、あちこちずぶずぶゆるんできました。いつどういうふうに氷が解けきってしまうのか、ある日突然、海になってしまうのか、どきどきはらはらです。イヌイットたちも、キャンプを移動すべきか、毎日、話し合ってます(でも、なかなか結論が出ない)。
水路際の氷上でクジラを待っていたとき、たった今までMAKOTOが立っていたその縁が、ふいに、大きく崩れて海に落ちていきました。そこに立ててたビデオカメラが、三脚ごと傾き、海へ消えていきました。たまたま、MAKOTOがお茶を飲みに後ろへ下がっていたあいだの出来事でした。撮った映像を失ったのは残念でしたが、でも人が落ちなかったのは本当にラッキーでした。
18_01.jpg天候も変わりやすく、同じ場所なのに毎日景色が異なります。朝から夕方までクジラを待つあいだにも、風が北から南に転じたり、海上の氷がこちらに吹き寄せられたり向こうに去ったり、晴れたり霙になったり。そのたびに右往左往させられます。
怖かったのは、ホッキョクグマです。地上の同じレベルで会うホッキョクグマには、銃を持ってるイヌイットがそばにいるとはいえ、クマまでの距離は数百メートルあるとはいえ、単純な恐怖を感じます。皆から離れて用足しに行き、人間の足跡だと安心してたのが、よく見るとクマの足跡だと気付いたとき、または、夜中に私がトイレに起きたその30分後、キャンプ地にクマが現れたと聞いたとき、かなりギョッとさせられました。
18_05.jpgでも、北極のいきもののうち、もっとも温暖化による絶滅が心配(ほぼ確実視!)されてるのも、ホッキョクグマです。そりゃあ面と向かったら怖いけど、クマの世界に入り込んでるのはこちらのほうなわけだし、あんな雄々しく美しい生きものが地球上で見られなくなったとしたら、なんて淋しいことでしょう。
さまざまな体験を終えて小笠原に帰ると、湿った空気の中にいるだけで、まるでパックしてるよう。みるみる肌がしっとりするのがわかりました。顔を触っても、もうごわごわしてません。ほっ。
でも、今も、あちらではイヌイットたちがパックすることなく(たぶん)、あの厳しい環境で生活を続けているのです。厳しいだけでなく、温暖化という新たな敵を抱えて。イヌイットのみならず、クジラたちも、そしてホッキョクグマたちも。




2007年07月18日

★Tomocolumn 09「囲いの中のイルカたち」★

17_02.jpg5月のゴールデンウイーク明け、某番組の録画撮りのため、伊豆にある下田海中水族館に行ってきました。ここでは、入江の一部を囲ってハンドウイルカを飼育していて、ショーや、イルカを触ったり一緒に泳いだりするプログラムが行われてます。
営業前の、まだ人のいない早朝に入館すると、水面のあちこちにイルカが浮かんで、ぐっすり寝てました。ぷかぷかとイルカたちが浮いてるさまなんて、決して自然界では見ることができません。それに驚いてると、一緒にいた元水族館トレーナーの女性は、「え? これが普通ではないの? 野生のイルカはこう寝ないの?」と、逆に驚いてましたっけ。
やがて私たちの気配に気付いたようで、イルカたちはゆっくり動き出しました。でも、どうやらまだ半分寝ぼけてるようで、ぼやーっと少し泳いでは、また停まったりしています。
そのうち、男性トレーナーが餌を入れたバケツを持って歩いてくると、さて、イルカたちの動きが、俄然変わります。興奮がイルカからイルカへと伝わり、眼が覚めたイルカたちが、水際を歩くトレーナーの横をついていきます。トレーナーはそんなイルカに声をかけるでもなく、知らん顔であっちを覗いたりこっちへ動いたりしてますが、イルカたちは、右へ左へと、ぴったりそのあとをついて行きます。時々顔を水面に上げて、トレーナーの様子を伺うさまは餌をねだってるようで、まるで飼い犬みたい。それを眺めていて、ちょっと複雑な気持ちになりました。
17_01.jpg私がいつも見ている野生のイルカたちは、私たちに媚びることはしません。むしろ、彼らのご機嫌を伺ってるのは、私たちの側でしょう。
海でイルカに会うたびに、まず、「ヤッホー、元気?」「ねえ、遊ぼうよ!」「こっちに来て来て、いいでしょう?」と尋ねます。そのときによっては、尋ねるまでもなく、好奇心満点でぐんぐん寄ってくるイルカもいますが、「何だよ、また君たちなの」「じゃあ、ちょっと遊んでやるか」「だめだめ、今日はそんな気分じゃないの」など、相手の反応はさまざまです。そのどんな場合でも、私が感じるのは、海の中で誇り高く、堂々と、そして自在に泳ぐ彼らの美しさです。私たちを構ってくれずさっさと通過されると、なーんだ、今日は遊んでくれないのかー、と、しゅんとしちゃうけど、でも、じゃあ、この次は遊ぼうね、と、懲りずにその後ろ姿に声をかけてしまいます。
17_03.jpg遊んでくれたときでも、いつまでもついていく私たちに飽きて、「ハイ、今日はこれでおしまい。もうついて来ないで」とウンチされちゃったら、ごめんごめん、わかったよ、と、泳ぐのをあきらめます。嫌がってるのを無理矢理ついていったら、その次には、はなから近づいてもくれないかもしれませんから。
というふうに、海で主導権を握ってるのは、海の生きものであるイルカたちです。
翻って水族館のイルカたちを思うと、主導権は、餌を与えてる人間のものです。人間の要望に順応できなければ、残念ながら、彼らは生きていくことができません。そして、どんなに広く見えるプールでも、自然の海に比べたら、なんて狭い狭い空間なのでしょうか。追いかける魚もいないし、背中をこすりつける砂もありません。
17_05.jpg水族館の意義を全否定するつもりはないし、間近に観察することによってイルカや他の生きもの、ひいては自然全体へ関心を持つきっかけにもなるでしょう。
でもでも、実際に今、囲いの中にいるイルカたちを見てしまうと、連れて来ちゃってごめんね、という気持ちを抱いてしまいます。
願わくば、彼らのパフォーマンスに喜んでる観客に、決してこれだけが彼ら本来の姿ではないことを知って欲しいと思うのです。彼らは決して、常にハイジャンプをしてるわけでもなければ、常に人間の思いどおりになるわけでもありません。意地悪なときもあれば、獰猛なときもあります。シャイな子もいれば、アグレッシブな子もいます。私たちと同様、フツーの生きものです。私たちがエライわけでも、彼らがトクベツな訳でもありません。たまたま海では彼らが生きていて、陸では私たちが生きてるだけ。だからこそ、互いの存在にきちんと敬意を払っていたいなと思うのです。



2007年04月19日

★Tomocolumn 08「ホエールウォッチング事始」★

16_01.jpg今年もザトウクジラが小笠原に帰ってます。今シーズンの特徴は、沿岸で多く見られてることでしょう。烏帽子岩から西島までの間で4〜5ポッド見られる日もしばしば。こんな簡単にクジラを見られるなんて、ツアーが始まった頃のクジラ事情を思えば、まさに隔世の感があります。クジラの数が増えたのか、それともより浅い海域を好むようになったのか。ウォッチシーズンも長くなり、以前は50%以下の遭遇率だったお正月やゴールデンウイークでも、ここ数年、毎日数ポッドのザトウに会えています。
そういえば、小笠原でウォッチングツアーが始まってもう20年にもなるのですね。若かった私(!)は、クジラを見たい一心でウォッチング船を手伝ってたものです。
16_03.jpg当時は午後のツアーだけで、3時になるとダイビング船や漁船が一斉に港を出ていきました。無線で連絡を取り合い、クジラを見つけたと聞けば、そこに全船が向かいます。船がクジラを囲んでひとしきりウォッチしたら、5時に揃って帰港します。
とにかくその頃は、クジラを見つけるまでが一苦労。探しても探してもなかなか見つからないときは、迫る帰港時刻にはらはらしたものです。やっとこさ見つけたら、呼吸間隔が30分でブローは2回だけ、フルークも上げない、なんてシブイクジラには泣けたなぁ〜。けど船団は、このクジラにしがみつくように追うしかなかったっけ。
16_04.jpgそういえば、こんなこともありました。某新聞の記者が来島し、取材用の船に村役場の担当者も数人乗り込みました。クジラを見せてインパクトのある記事を書いて貰い大きな宣伝効果を得ようと勇んで海に出たのですが、でも、走れども走れどもクジラの姿はありません。お喋りしながら楽しそうに海を見ていた役場の人たちも、やがてデッキの寒さにめげて、ひとりふたりと暖かいキャビンに撤退していきます。気がつくと、デッキにはスタッフと私とその記者だけ。日が傾くにつれて風はますます冷たく吹き、波も出てきました。でもでもでも、クジラはどこ?あきらめて引き返すしかないのか??記事はボツなの??? 皆、黙り込み、重苦しい雰囲気です。
16_06.jpgと、記者が、「あ!あそこにブローが!!」と叫びました! お、やっといたか!と、指さす方を見ると・・・・・あ、あれは・・・・岩にあたった波の飛沫・・・? ?
でも記者は、「ほらほらほら、あれはブローでしょ?!やっと見つけましたね!!」と大喜びしてます。スタッフはそっと互いの顔を盗み見ながら、でも、誰もブローではないと言えません・・・。「いやぁ、良かった、良かった、やっと見つけたよ! そーか、ブローってこんなふうに見えるんだ、なるほど、なるほど、こういう感じなんだな、よしよし!!そーか、わかったぞ、よーし!!なるほどねぇ!」記者には回りの反応は全く目に入らないようで、ひとりうなずきがら、しきりにメモをとってます。まあ、確かに、ブローもこんなふうに見えるよな、と、私は心につぶやきます。文章にしたらあまり違いはないかもしれない・・・。
16_05.jpgというわけで、スタッフの賢明な(?)沈黙のおかげで記事は完成し、小笠原のホエールウォッチングは広く知られるようになったのでした。めでたしめでたし。
ウォッチング方法も、初期には近くで見せようと追いかけていたのが、船が追うほどクジラは逃げるとわかり、脅かさないよう少し離れて見守るようになりました。すると、クジラから船に近づいてきたりのんびり遊んだりすることが増えました。お客さまの意識も変わり、前は、下船後に「あっちの船のほうがクジラに近かったじゃないか」なんて不満も聞かれましたが、今では「クジラを追い回す船には乗りません」とおっしゃる、野生のいきものへの理解がある方が多くなりました。
今、これほど良い環境でウォッチングし続けられてるところは世界にも少ないとか。そんな小笠原だからこそ、クジラも安心して岸に寄ってきてるのかも。生まれ故郷の海でのびのびしてるザトウたち、でもあまり気を許して座礁しないようにね。(T)




2006年12月30日

★Tomocolumn 07「七つの顔を持つクジラ」★

15_01.jpg「春告鳥」といえばウグイスのことですが、小笠原の「春告鯨」はザトウクジラでしょうか。気の早いザトウの初確認こそ冬ですけど、その数が増えて沿岸でさまざまな生態を見せてくれるのは、まさに立春の頃からです。そして春たけなわのウォッチングシーズンには、雄と雌とが恋を語らったりベビーが日ごとに成長したりと、彼ら自身にとっての春をも満喫しているのです。
そんなザトウクジラですが、といって、どこででも必ず「春を告げて」いるわけではなく、海域によって現れる季節が違います。そして面白いことに、「クジラ七変化」ともいえるほど、見せる顔(姿や行動)も異なります。
15_09.jpg例えば、餌の取り方ひとつとっても、アラスカではバブルネットフィーディング、ステルワーゲンバンクではキックフィーディング、ニューファンドランドでは手つなぎ鬼フィーディング(ごめんなさい、英語での呼び名が無く、勝手に名付けました)と、それぞれ興味深い方法を編み出してます。
また、ザトウクジラは採餌海域と繁殖海域とを季節回遊してますが、食べてる半年と絶食してる半年とでは、その体格から変わってしまいます。小笠原で見るザトウを大きいなぁと思ってた私ですが、アラスカでの大きさにはいっそう驚かされました。たっぷり二回りは太ってるでしょうか、水面上に現れる部分もずっと広くて、丸々、ぷっくりしています。とりわけ、夏中食べ続けたあとの9月のでっかさといったら! この頃には当歳生まれの子クジラもずいぶん育っていて、ちょっと見には親と区別が付かないくらいです。
15_07.jpg違うのは体つきだけではありません、満腹してるクジラたちの動きはおっとりしてます。深く大きな呼吸を1回、そしてもう1回。ゆっくりフルークをあげて潜っていくまでの動作は、ビデオを遅回しにしてるよう。大気が冷たいせいでいつまでもその場に形がとどまるブローからして、まるでストップモーションです。
水面に浮かんだまま、気持ちよさそうに熟睡してるクジラも見かけます。船が近づいても気付かないのか、全く動きません。死んでるのかしらと不安になる頃、ようやくたーーっぷり深々と呼吸をし、そしてまたぐっすり寝入ってしまいます。こんなに寛いでるクジラなんて、小笠原では会ったことはありません。ザトウたちは、北の豊饒の海で、食っちゃ寝、食っちゃ寝の幸せな日々を過ごしてるのでしょう。
15_08.jpg一方、小笠原でのように、クジラ同士が激しくぶつかったり追いかけ回したりという闘争的な姿は、アラスカでは見かけません。荒々しいブロー音、めまぐるしく水面を泳ぎ回る巨体、威嚇する水しぶき。そんな猛獣のような迫力あるさまは、繁殖海域ならではです。呼吸もへたくそなベビーの仕草や、ママの側で跳び回るチビのやんちゃ振りに眼を細めていられるのも、生まれて間もない小笠原の海だからこそ。
このほかにも、海域ごとの違いを挙げていけば、まだまだたくさんあります。
皆様もご承知のように、ウォッチングでは日によって見られる行動が違いますが、海域が異なればなおさら、その生態や姿も変わり、「ザトウとはこういうもの」「こんなことをするもの」と、ひとことで決めつけることはできません。そんな彼らだからこそ、遭うたびに新鮮な発見と感動を受け続けるでしょう。
アラスカといえども、日の長い夏の終わり。フィヨルドの中で船を停めて、デッキの上でビールを傾けながら、あっちに浮いてるクジラやこっちで林立するブローを眺める穏やかなひととき。
小笠原といえども、風の強い春の初め。波やうねりに大揺れする船の手すりにしがみつきながら、ブホブホと猛り狂うクジラの迫力に思わず悲鳴を上げるドラマチックなひととき。
うーん、どちらのウォッチングも捨てがたい!
というわけで、クジラフリークの私たちは彼らのいろいろな顔を見たくて、何日も、そしてあちらこちらへと、ひんぱんに海に出て行かざるを得ないのですよね。
さて、来る2007年、ザトウたちはどんな新たな顔を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。




2006年10月18日

★Tomocolumn 06「クジラという名の犬の話」★

14_03.jpg夏シーズンの真っ盛り、Sea-Tacの愛犬ヴァルが彼岸に旅立ちました。
ヴァルの名前の由来は、スカンジナビア語の「クジラ」です。ベルジアン・タービュレンというちょっと珍しい犬種の雌で、気が小さい甘ったれでした。
13年のあいだ、Sea-Tacのお客様に愛されて、のびのびと生きてきました。
はじめは海に連れて行ってもまともに泳げなかったので、まずは私たちの両腕にお腹を乗せて水面で休憩することを教えました。そのあと泳ぎを覚えるのはすぐでした。泳ぎ疲れたら人に近づいてはもたれて休み、また元気に泳ぐようになりました。フィン無しでは追いつけないくらい、けっこう早くて見事な「犬かき」でした。
おが丸見送りのとき、ダンシングホエールの舳先ですっくと立つ姿は格好良かったのですが、おが丸の引き波で大きく揺れてバランスを崩してからは、嫌がるようになりました。それからは、もっぱら(揺れない)港で帰る皆様にご挨拶してました。
14_01.jpgそれでも、ダンシングホエールには何度も乗ってます。オフの日には兄島や南島へも行きました。イルカと泳ごうと海に入った私を追いかけて、舷を越えて飛び込んできたこともありました。思いがけない四つ足の闖入に驚いたイルカたちは、あっという間に逃げ去ってしまいましたけど。舳先から、潮を吹くザトウクジラを眺めたこともありましたが、さて、果たして巨大なクジラを生きものだと認識していたのでしょうか。自分の名前の由来であるとは、思いもしなかったことでしょう。
ウエザーステーションは、ヴァルにとって縄張りでした。朝はスタッフと一緒に海況をチェックに行ってましたし、夕方は夕日ウォッチのお客さんたちに構ってもらってました。人が少ないときにあのウッドデッキで追いかけっこするのも大好きで、柱のあいだをぐるぐると、いつまでもきりなく走ってました。
14_02.jpgSea-Tacのサンセットクルーズにも必ず参加してました。凪の海で夕焼けを見ながらビールを飲む皆のかたわらに控えていても、やがてアルコールの匂いに閉口してか、ひとりでキャビンに入ってしまったものです。そうそう、あの頃は、夕暮れの海に飛びこんで海パンを脱いで振り回すのが一部お客さんのあいだで流行ってましたね〜。揺れるボートが苦手なヴァルは早く降りたくて、まだちゃんと着岸してないのにやみくもに飛び出しては桟橋の手前に落水したこともしばしばでした。私たちが後ろで着岸作業をしていると、お客さんが、「今、キャイン・ボチャン!!って聞こえましたよ」と教えてくださったものです。
夏の盆踊りでは、Sea-Tacのござの番をしてました。リードに繋がれながら、お客さんと並んで「小笠原音頭」や「マッコウ音頭」の輪にも加わってました。
14_04.jpgおが丸出港前日の打ち上げにも欠かせませんでした。宮之浜道の事務所でも東町のココでも、おとなしく隣に座って飲んでお喋りしてる皆を見てました。リピーターさんが持ってきてくださるチーズが、ヴァルにとって大きな楽しみだったことでしょう。
こうして振り返ってみると、ヴァルと暮らした年月はSea-Tacの過ごした年月でもあり、お客様との思い出のあちこちにヴァルの姿があります。
ツアーのありかたも年と共に変化し、そういえば、最近はツアー後の事務仕事が忙しく、いつのまにかサンセットクルーズはしなくなりました。スタッフが増えて事務所が狭くなったために、打ち上げの飲み会も事務所ではなくて町中の店でするようになりましたし、一時、受付窓口のあったココも今はなくなりました。
これからのSea-Tacは、どんなふうに進化(?)していくのでしょう。「クジラ」という名の犬はいなくなりましたが、今後もより良いツアーを目指しつつ、お客様との新たな思い出が増えていくはずです。それでも、皆様が、ヴァルのことも心の片隅に覚えてやってくださると嬉しいです。


2006年06月21日

★Tomocolumn 05「バハマのイルカたち」★

13_04.jpgゴールデンウイークが終わった5月中旬、梅雨入りした小笠原を離れ、バハマのイルカに会いに行ってきました。
ワタシにとって3回目のバハマは、イルカの種類も小笠原とは違い、海の色のさわやかな、大好きなスイムポイントです。フロリダから2週間のクルーズは、イルカ好きのメンバーとパワフルな現地スタッフとで、それはそれは充実した日々でした。
ボートがイルカを探して走る間、私たちはデッキで日光浴したり本を読んだりウクレレを弾いたり、思い思いにくつろいでます。やがてスタッフの「Dolphi〜n!」という声が響くと、まずは船首波に乗るイルカをウォッチ。凪いだ水面にイルカたちの泳ぐさまがくっきり見えます。私たちが泳げそうなイルカだとキャプテンが判断したら合図があり、いよいよスイムの用意です。
13_05.jpgゴーサインで静かに海に滑り込むと、見渡す限りの白い砂と透き通るブルーの海。そこへ、タイセイヨウマダライルカの群れが現れます。からだの斑点がひときわ目立ちます。体中が斑模様のアダルトは、近づく私たちを一睨みして悠々と泳ぎ去ります。あとからヤングたちがはしゃぎながらやってきて、ヒトと並んで泳いだり、くるくる回って遊んだり、イルカ同士で激しく絡んだり。小笠原でのスイム歴が長い人も、予想と異なる反応を示すイルカたちに新鮮な驚きがあるようです。
13_01.jpg水深が浅いので、イルカが砂の中にくちばしを突っ込んで魚を追い出してるさまもよく見られます。魚が逃げる、イルカが追う。うまくぱっくりくわえることもあれば、魚のほうが一枚上手でさっと逃げてしまうこともあります。うしろに回り込んだ魚を探してうろうろしてるイルカのユーモラスなさまに、思わず笑っちゃいます(魚のほうは必死でしょうが)。
長い昼が終わって日が暮れると、今度はナイトドルフィンスイムのチャンスです。リーフの際でボートが灯りをつけて停まり、プランクトンや小さいイカが集まってきます。そしてそれを目当てにトビウオが、次にトビウオ目当てのイルカが現れます。暗い海はちょっとコワイけど、思い切って水に入ると、突然、目の前に現れるイルカたち。昼より一段と動きが素早く、食い気がたって目がつり上がってる(ような)イルカやトビの競演は、迫力があります。
13_03.jpgタイセイヨウマダライルカ以外には、時たまハンドウイルカに会います。マダライルカより大きく、ヒトと遊びはしませんが、水中の私たちに興味津々。しきりに頭を動かして、丸い黒目でじーっとこちらを観察しています。通り過ぎてもまだ振り返って首をかしげてる、そんな愛嬌のある表情が魅力的です。
スイムの合間には、トローリング・フィッシング・スノーケリング・ダイビングも楽しみ、釣り上げた魚は刺身やお寿司として食卓を飾ります。
ワタシにとってはスタッフの仕事ぶりもとても参考になりますし、キャプテンと彼我のイルカ事情について語り合うのも楽しいひとときでした。20年以上前からバハマのイルカたちを観察してきたキャプテンと、やは13_02.jpgり同じくらい長く小笠原で見てきたワタシ(年がばれる・・・?)と、イルカの種や海は違えども、スイム環境の移り変わりの類似点には互いにビックリするくらい(ワタシは片言の英語しか話せないのだけど、ことイルカやクジラについてだったらよく通じてしまうのが不思議〜)。
残念なことに、バハマのイルカたちは2年前の2つの大きなハリケーンのために数が減ってしまったそうです。これは他人事では決してありません、小笠原のイルカだって、いつどんなハプニングで生息状況が変わるかもしれないのですよね・・・
バハマのイルカとのコミュニケーションを満喫し、またいろいろ考えさせられもした2週間の研修クルーズでした。今回の研修のさまざまな成果は、Sea-Tacの以後のツアーに反映されることでしょう。乞う、ご期待!? 




posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | バハマのイルカたち

2006年03月16日

★Tomocolumn 04「響けソング」★

ザトウクジラのソングを聴いたことがありますか?
12_01.jpg初めてその声を聴いたとき、どんな印象をお持ちになったでしょう?
冬から春にかけて、小笠原の海の中は雄クジラの声が響いています。雌への求愛の歌ともいわれ、いやいや、他の雄への縄張り宣言だともいわれてますが、私たちヒトにはその実情は知りようがありません。
もしかしたら、ただただ、歌いたくて歌ってるだけかもしれません。はるばる北の海からやってきたクジラにとって、南の海は眼にする魚も色鮮やかで、水温も暖かく透明度も良く、嬉しくなって思わず鼻歌が出てるのかもしれない。または、遠くから疲れきってようやくたどり着いたこの海でどの雌にも相手にされず、自棄になって呻いてるのかもしれない。それとも、雌にアタックする前に自分自身に気合いを入れてるのかも?(ハンプバック浜口?) どの解釈もなるほどと思える(?)、そんな不思議な声音と旋律の「歌(ソング)」ですよね。
12_03.jpg毎年、シーズン初めのソングはへたくそで、ブツブツ途切れてしまいがちです。小笠原に到着したばかりで、まだ息が切れてるのでしょうか。それとも、調律中? でもそれが、日を追うごとに上手に、いかにも歌らしくなっていきます。
あの巨体でよくもまあ、いったいどこから出してるのかしらと呆れるくらいに高くか細い音から、密林の猛獣のような低く太い音まで駆使した歌は、見事です。とても1頭で出してるとは思えないような、「いっこく堂」もどきの声音です。
私たちヒトは、それを聞きながら、年ごとに特徴のある歌の違いを楽しんだり、歌い手の気持ちをあれこれ忖度したり。
12_05.jpgある年は演歌の嘆き節風ソングで、あまりにも哀れっぽい節回しに、聞いてたお客様がついに同情して「わかった、私があなたのところへ行ってあげる!」。 別のある年は、高音が多いニューミュージック調で軽やかなのだけど、これはこれで、シーズン終わりのもう雌もいないであろう頃に聴くと、ひとしお切ないものが・・・。
まれに2頭がごく近くで声を張り上げてると「まあ、競争してるのかしら」とか、泳ぎながら歌ってると「あらあら、焦ってるのかしら」とか、勝手に想像をめぐらせています。いっしょに聞いてる男性陣からあまり感想が聞かれないのは、身につまされてるのでしょうか・・・(失礼!)。
12_02.jpgまた、このシーズンのドルフィンスイムでは、眼ではイルカを見ながら、耳ではクジラのソングを聴いている、なんて体験もできます。姿は見えなくても、まさに今、同じ海の中にいる彼らの存在をまざまざと感じられて、ああ、イルカとクジラだらけの、なんて豊かな海なのだろうと嬉しくなっちゃいます。
ザトウのソングは180キロ先まで聞こえてるそうで、海中の状態によっては、なんと1800キロもの彼方まで伝わるとか。となると、一足先に父島に到着したクジラの不慣れなソングを、旅の途中の三陸沖あたりにいるザトウが聞いて、「なんだ、へたくそめ、よしこれからオレが行ってもっと上手に歌ってやるぞ」と思ってたりして。または、こちらから、「おーい、根室沖の仲間たち、小笠原は暖かいぜー。早く来いよー」と伝えてるのかも。
彼らにとって、地球はなんて狭いのでしょう。彼らこそ、私たちよりずっと昔から、ちゃんとグローバルスタンダードで生活しているのです。ソングに思いをはせることで、私たちも真似して地球規模でものを考えられそうです。



posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 響けソング