2006年10月18日

★Tomocolumn 06「クジラという名の犬の話」★

14_03.jpg夏シーズンの真っ盛り、Sea-Tacの愛犬ヴァルが彼岸に旅立ちました。
ヴァルの名前の由来は、スカンジナビア語の「クジラ」です。ベルジアン・タービュレンというちょっと珍しい犬種の雌で、気が小さい甘ったれでした。
13年のあいだ、Sea-Tacのお客様に愛されて、のびのびと生きてきました。
はじめは海に連れて行ってもまともに泳げなかったので、まずは私たちの両腕にお腹を乗せて水面で休憩することを教えました。そのあと泳ぎを覚えるのはすぐでした。泳ぎ疲れたら人に近づいてはもたれて休み、また元気に泳ぐようになりました。フィン無しでは追いつけないくらい、けっこう早くて見事な「犬かき」でした。
おが丸見送りのとき、ダンシングホエールの舳先ですっくと立つ姿は格好良かったのですが、おが丸の引き波で大きく揺れてバランスを崩してからは、嫌がるようになりました。それからは、もっぱら(揺れない)港で帰る皆様にご挨拶してました。
14_01.jpgそれでも、ダンシングホエールには何度も乗ってます。オフの日には兄島や南島へも行きました。イルカと泳ごうと海に入った私を追いかけて、舷を越えて飛び込んできたこともありました。思いがけない四つ足の闖入に驚いたイルカたちは、あっという間に逃げ去ってしまいましたけど。舳先から、潮を吹くザトウクジラを眺めたこともありましたが、さて、果たして巨大なクジラを生きものだと認識していたのでしょうか。自分の名前の由来であるとは、思いもしなかったことでしょう。
ウエザーステーションは、ヴァルにとって縄張りでした。朝はスタッフと一緒に海況をチェックに行ってましたし、夕方は夕日ウォッチのお客さんたちに構ってもらってました。人が少ないときにあのウッドデッキで追いかけっこするのも大好きで、柱のあいだをぐるぐると、いつまでもきりなく走ってました。
14_02.jpgSea-Tacのサンセットクルーズにも必ず参加してました。凪の海で夕焼けを見ながらビールを飲む皆のかたわらに控えていても、やがてアルコールの匂いに閉口してか、ひとりでキャビンに入ってしまったものです。そうそう、あの頃は、夕暮れの海に飛びこんで海パンを脱いで振り回すのが一部お客さんのあいだで流行ってましたね〜。揺れるボートが苦手なヴァルは早く降りたくて、まだちゃんと着岸してないのにやみくもに飛び出しては桟橋の手前に落水したこともしばしばでした。私たちが後ろで着岸作業をしていると、お客さんが、「今、キャイン・ボチャン!!って聞こえましたよ」と教えてくださったものです。
夏の盆踊りでは、Sea-Tacのござの番をしてました。リードに繋がれながら、お客さんと並んで「小笠原音頭」や「マッコウ音頭」の輪にも加わってました。
14_04.jpgおが丸出港前日の打ち上げにも欠かせませんでした。宮之浜道の事務所でも東町のココでも、おとなしく隣に座って飲んでお喋りしてる皆を見てました。リピーターさんが持ってきてくださるチーズが、ヴァルにとって大きな楽しみだったことでしょう。
こうして振り返ってみると、ヴァルと暮らした年月はSea-Tacの過ごした年月でもあり、お客様との思い出のあちこちにヴァルの姿があります。
ツアーのありかたも年と共に変化し、そういえば、最近はツアー後の事務仕事が忙しく、いつのまにかサンセットクルーズはしなくなりました。スタッフが増えて事務所が狭くなったために、打ち上げの飲み会も事務所ではなくて町中の店でするようになりましたし、一時、受付窓口のあったココも今はなくなりました。
これからのSea-Tacは、どんなふうに進化(?)していくのでしょう。「クジラ」という名の犬はいなくなりましたが、今後もより良いツアーを目指しつつ、お客様との新たな思い出が増えていくはずです。それでも、皆様が、ヴァルのことも心の片隅に覚えてやってくださると嬉しいです。