2007年04月19日

★Tomocolumn 08「ホエールウォッチング事始」★

16_01.jpg今年もザトウクジラが小笠原に帰ってます。今シーズンの特徴は、沿岸で多く見られてることでしょう。烏帽子岩から西島までの間で4〜5ポッド見られる日もしばしば。こんな簡単にクジラを見られるなんて、ツアーが始まった頃のクジラ事情を思えば、まさに隔世の感があります。クジラの数が増えたのか、それともより浅い海域を好むようになったのか。ウォッチシーズンも長くなり、以前は50%以下の遭遇率だったお正月やゴールデンウイークでも、ここ数年、毎日数ポッドのザトウに会えています。
そういえば、小笠原でウォッチングツアーが始まってもう20年にもなるのですね。若かった私(!)は、クジラを見たい一心でウォッチング船を手伝ってたものです。
16_03.jpg当時は午後のツアーだけで、3時になるとダイビング船や漁船が一斉に港を出ていきました。無線で連絡を取り合い、クジラを見つけたと聞けば、そこに全船が向かいます。船がクジラを囲んでひとしきりウォッチしたら、5時に揃って帰港します。
とにかくその頃は、クジラを見つけるまでが一苦労。探しても探してもなかなか見つからないときは、迫る帰港時刻にはらはらしたものです。やっとこさ見つけたら、呼吸間隔が30分でブローは2回だけ、フルークも上げない、なんてシブイクジラには泣けたなぁ〜。けど船団は、このクジラにしがみつくように追うしかなかったっけ。
16_04.jpgそういえば、こんなこともありました。某新聞の記者が来島し、取材用の船に村役場の担当者も数人乗り込みました。クジラを見せてインパクトのある記事を書いて貰い大きな宣伝効果を得ようと勇んで海に出たのですが、でも、走れども走れどもクジラの姿はありません。お喋りしながら楽しそうに海を見ていた役場の人たちも、やがてデッキの寒さにめげて、ひとりふたりと暖かいキャビンに撤退していきます。気がつくと、デッキにはスタッフと私とその記者だけ。日が傾くにつれて風はますます冷たく吹き、波も出てきました。でもでもでも、クジラはどこ?あきらめて引き返すしかないのか??記事はボツなの??? 皆、黙り込み、重苦しい雰囲気です。
16_06.jpgと、記者が、「あ!あそこにブローが!!」と叫びました! お、やっといたか!と、指さす方を見ると・・・・・あ、あれは・・・・岩にあたった波の飛沫・・・? ?
でも記者は、「ほらほらほら、あれはブローでしょ?!やっと見つけましたね!!」と大喜びしてます。スタッフはそっと互いの顔を盗み見ながら、でも、誰もブローではないと言えません・・・。「いやぁ、良かった、良かった、やっと見つけたよ! そーか、ブローってこんなふうに見えるんだ、なるほど、なるほど、こういう感じなんだな、よしよし!!そーか、わかったぞ、よーし!!なるほどねぇ!」記者には回りの反応は全く目に入らないようで、ひとりうなずきがら、しきりにメモをとってます。まあ、確かに、ブローもこんなふうに見えるよな、と、私は心につぶやきます。文章にしたらあまり違いはないかもしれない・・・。
16_05.jpgというわけで、スタッフの賢明な(?)沈黙のおかげで記事は完成し、小笠原のホエールウォッチングは広く知られるようになったのでした。めでたしめでたし。
ウォッチング方法も、初期には近くで見せようと追いかけていたのが、船が追うほどクジラは逃げるとわかり、脅かさないよう少し離れて見守るようになりました。すると、クジラから船に近づいてきたりのんびり遊んだりすることが増えました。お客さまの意識も変わり、前は、下船後に「あっちの船のほうがクジラに近かったじゃないか」なんて不満も聞かれましたが、今では「クジラを追い回す船には乗りません」とおっしゃる、野生のいきものへの理解がある方が多くなりました。
今、これほど良い環境でウォッチングし続けられてるところは世界にも少ないとか。そんな小笠原だからこそ、クジラも安心して岸に寄ってきてるのかも。生まれ故郷の海でのびのびしてるザトウたち、でもあまり気を許して座礁しないようにね。(T)