2012年05月30日

★Tomocolumn 23「ノッチ恋しや」★

bn0051-1.jpg小笠原のミナミハンドウのうち、格別に思い入れのあるイルカが、「ノッチ」です。
ノッチのことは、ベビーの頃から見続けてきました。というか、ベビーから識別できてるのは、ノッチだけです。たいていのベビーはつるつるお肌がキレイで傷もなく、個体識別の手がかりがないからです。ところがノッチに限っては、生まれたときから体の特徴がありました。
彼女(そう、ノッチは雌です)に初めて会ったのは、もうかれこれ10年以上も前になります。
今でもよく覚えてます。ミナミハンドウの群を見つけて水中へ入ると、まだ小っちゃなベビーのクセに、ヒトに興味を示してまっすぐ近付いてきたのです。くるくるといっちょ前に回って遊びます。やがて群と共に泳ぎ去っても、次にボートで回り込んで水中に入ると、またまっしぐらに近付いてきます。私たちが入るたびに、母さんから離れて、群の先頭を切って寄ってくるベビー、なんて好奇心旺盛なのでしょう。普通だったら、まだお母さんにぴったりくっついて泳いでる時期なのに。
bh9301-2.jpg「あの子、可愛いね」「遊び好きだね〜」、そんなことを言い合って、さてもう一度、と入ってみたら、あれれ?どこへ行ったのかしら?寄ってこないよ?
捜してみると、あらまぁ、母さんイルカのお腹の下でおっぱいを飲んでます。たくさん泳いで、さすがにお腹が空いたのでしょう、しっかりおっぱいをくわえたまま母さんに引っ張られてるのだけど、でも、大きな眼がこちらをじーっと見てて、うーん、もっと遊びたいのに〜、と言ってるみたい。「うん、わかったよ、いっぱいおっぱいを飲んで、また今度遊ぼうね」。そう言って別れたときに背中の切れ込みを確認、このベビーをノッチと名付けました。
bn9835-3.jpgそれ以後、ノッチといったい何回会ったことでしょう。ベビーの頃はまだヒトとの遊び方がわからず自分のペースで泳ぐので、その早さに私たちが置いてけぼりを食うこともありました。少し大きくなると、ヒトのペースに合わせるのを覚えてくれて、ずいぶん長い時間一緒に泳ぎました。もっと大きくなったら、私とノッチが遊んでるところへ寄ってきた年下のベビーに、すっと順番を譲るようになりました。私はノッチと遊びたいのになぁと思うのだけど、でもノッチの気持ちを尊重して、そのベビーと遊んだものです。ノッチ、お姉さんになったのねぇと、感慨にふけりながら。
ヒトが大好きなノッチったら、例えば、イルカの群れが今はイヤよと船を避けて深みでじーっと隠れてるのに、うーん、遊びたい、もう、ガマンできない!とひとりで浮上して来ちゃいます。おかげで、他のイルカたちがいるのもばれてしまった、なんてこともあり、ノッチ、私たちは嬉しいけど、あなた、他のイルカに虐められるのじゃないの、と心配したり。実際、好奇心が強いノッチは怪我も多くて、ずいぶんハラハラさせられました。
bn9837-4.jpgそんなノッチも、やがて、オトナになってお腹が大きくなりました。ある日、泳ぎながら体をくの字に曲げて、「ぴ〜〜〜っ」と悲鳴を上げてたノッチ。その生殖孔から何やら出てきてる? もしや、出産!? だとしたらぜひとも見届けたいところだけど、いっぽう、万一にも私たちが追うことによって難産になってしまうのだけは避けたく、無事を祈りつつ、離れました。
そして、その次に会ったときは、果たして、ベビーを連れてました。ノッチの子ならさぞかし遊んでくれるかと期待したけど、どっこい、このベビーは男の子だったせいか、とても神経質でした。そのぶん、ノッチもベビーをかばってヒトを避けるようになってしまったのは、残念でした。
その子が独り立ちしたあと、次に生まれたベビーは女の子で、こちらは母親譲りの遊び好き。ノッチと親子揃って遊んでくれることもしばしばで、大いに楽しませてもらいました。大勢のヒトが一緒に水中に入っても、まっすぐ私めがけて泳いでくるノッチに、もしかしたら私のことがわかってるのかしら、なんて喜んだりもして。
bn9933-5.jpgそんなノッチですが、実は、ここ数年、会っていません。どうしたのだろう、と思っていたら、何と、伊豆の鳥島でノッチが目撃されました。小笠原から北へ400キロ以上行ったところです。どうして?好奇心旺盛のノッチだけど、それにしても、そこまで行かなくても・・・。
なぜ小笠原を離れたのかわかりませんし、また戻ってきてくれるのかもわかりません。この移動でイルカ研究者の中ですっかり有名になってしまったノッチ、この先、どこで目撃されるのでしょうか。
ねぇ、ノッチ、あなたに会えなくて淋しいな。生まれ故郷に戻っておいで。そして、また一緒に遊ぼうよ!(TOMOKO)
posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ノッチ恋しや
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