2010年10月26日

★Tomocolumn 19「マッコウの子育て」★

19-1.jpg小笠原の海では、今日も多くの生きものが子育て中です。
ザトウクジラやアオウミガメのように、繁殖のためにはるばる小笠原へやってくる種もいれば、ミナミハンドウイルカのように、ずっとこのあたりにいて繁殖する種もいます。それぞれが、この美しい海で、次世代への命の引き継ぎにいそしんでます。
巨大なマッコウクジラもまた、小笠原で子育てをしています。成長した雄は北へ旅立ちますけど、雌はこの近海に棲み続けます。
なので、私たちがよく会うマッコウクジラは、7〜12メートルくらいの雌と若者たちの集団です。時に、4メートルしかない、生まれたばかりのベビーも見かけます。
19-2.jpgベビーは、まだ呼吸するのもへたくそです。四角い頭を海面に突き出して、上下に揺らしてリズムをとりながら呼吸してます。鼻の穴だけを水面上に出す、効率的なアダルトの呼吸のしかたとは全く違います。
まだ警戒心のないベビーが、ふらふらと船のほうに寄ってきてしまうこともあります。お母さんは、慌ててベビーを連れ戻しに来ます。アブナイじゃないの、と、まるでこちらのせいのように船を目の敵にすると、もう、いけません。向きを変え、子どもをしっかり守って泳ぎ去ります。こちらは、その後ろ姿を見送るしかないのです。そんな、大事に大事に育てているマッコウの子どもも、でも、お母さんが食事しに深海へ潜っている間は、たったひとりで帰りを待っていなくてはなりません。どんなに可愛い子でも、1000メートル以上の海の底まで連れて行くことはできないのです。
19-3.jpgオトナのマッコウが潜っている時間がどれくらいか、ご存じですか?クジラにもよりますが、だいたい30分から1時間です。彼らが海の深みに辿り着くだけで、10〜15分かかります。そこで餌となるイカなどを追い、首尾よく食べられても食べられなくても、また浮上に10〜15分かかります。水面で待っていた子どもと合流し、呼吸を整えながら授乳します。そしてしばらくすると、また餌を探しに潜っていきます。
子クジラのほうは、たいていお母さんが潜るとき、一緒に潜ります。2頭の姿が消えるのだけど、数分から十数分で、子クジラだけがぷはっと海面に現れます。もうそれ以上、母さんについて行けなかったのでしょう。
19-4.jpg母さんを待つ間、水面の子クジラは、ぷかぷか浮いてたりばちゃばちゃ泳いだり、不規則な動きです。ずーっと様子を見てると、やがて、まっしぐらに泳ぎはじめます。一方向に向かって、頭を上下させながらどんどん泳いでいきます。さてはそっちにお母さんが浮いてくるのかと船がついていくと、果たして!気が付くと、お母さんマッコウが子クジラに寄り添っています。子クジラは、荒い呼吸を繰り返すお母さんの隣にいたかとも思うと、ふっと消えて、お母さんの下に潜りこんでます。きっと夢中でおっぱいを飲んでいるのでしょう。
好奇心の強い子クジラがひとりで待ってるとき、ふと船に興味をもつと、そのまま近付いてきちゃいます。私たちにしてみれば、小さいとはいえ、間近でマッコウを見られてラッキーです。子クジラは、舳先から舷を回ったり船底をくぐったり、うろうろ行ったり来たりしてます。船上からは歓声が上がりますが、でもでも、お母さんがその様子を知ったら、きっと気が気でないでしょう。
19-5.jpgもし、子クジラに危険が迫っても、お母さんはすぐ子クジラを助けに来ることはできません。海面の子どもと海底のお母さんが音を出して会話してるとしても、子クジラの悲鳴を聞きつけたお母さんが浮上してそばに行くまで10分はかかるのですもの。「獅子は子を千尋の谷に突き落とす」と言いますが、マッコウは、子を置いて、自らが千尋の海底に下りていくのです。しかも一回きりでなく、日に何度も何度も。それは、ある意味では、突き落とすよりもっと辛いことかもしれません。とはいえ、あらためて思えば、野生の生きものは、マッコウに限らず、それぞれがハードな環境で子どもを育てているものです。子を置いて親がエサをとりに行くのも、よくあることです。それでも無事に子育てできる確率が高いから、その種は今でも存続しているのでしょう。
いっぽう、生息環境には変化がつきものでもあります。これから先もマッコウたちが向かう深海にエサが豊富にあり続け、そして、子クジラが待つ海面が安全であり続けますように。なによりも、私たちヒトの影響で彼らの生存を脅かすことがないようにと願いながら、今日もマッコウとの出逢いを楽しみたい私たちです。(T)
posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | マッコウの子育て
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