2011年11月27日

★Tomocolumn 22「 子ガメの冒険」★

gt292-2.jpg今年もたくさんのアオウミガメの赤ちゃんが小笠原の砂浜で生まれ、大海原へ旅立ちました。たった5センチしかない小さなカメたちの長い長い冒険の旅は、まさに始まったばかりです。赤ちゃんガメは、真っ黒で、オトナよりもヒレが長く、そのヒレの縁はレースのように白くギザギザで、眼も大きく、とても愛らしいです。前ビレを大きくバタバタ動かすさまは、ゼンマイ仕掛けのオモチャみたい。
ある夜、そんな赤ちゃんガメが、砂の中の産卵巣から地表目指して上り始めます。兄弟たちと力を合わせて、少しづつ上り、広々とした砂浜に初めて顔を出したとき、初めて嗅ぐ空気の冷たさや広がりをどのように感じるのでしょう。よっこらしょと体全体を砂の上に現したら、暗がりでもぼんやり明るく見える海を目指します。水の匂いもするかもしれません。ちょっと歩いては停まり、首を伸ばして、行き先を大きな眼でじーっとしばらく見つめます。そして、頭を戻して、またせっせと歩きつづけます。
gt051-3.jpg石に乗り上げてひっくり返ったりふらついたりしながら、海の方向に進みます。ようやく水際まで辿り着くと、寄せる波に揉まれつつ、深みに向かいます。いざ泳ぎだすと、小さいクセに、あんがい早いです。力強くヒレを掻き、ぐいぐい進みます。頭を水面上にもたげて呼吸をひとつし、また頭をつけて泳いでいきます。水面に黒くて丸い頭がひょこんと出る、その位置が浜からどんどん遠ざかっていきます。広い海で、頼りないくらいになんて小さな頭でしょう。こんなちっちゃなカメに、これからどんな試練が待ってるのでしょうか。
赤ちゃんガメにとっての長旅は、ごくごく厳しいものです。大きなサカナや海鳥につかまってしまうかもしれません。何より大きな問題は、カメにとっての餌です。体力のあるうちに餌となる流れ藻に辿り着けなければ、生き延びられません。どうやら、99%の稚ガメが、運に恵まれず餓死してしまうようです。それにそもそも、どうして進むべき方向がわかるのでしょう。ウミガメは地磁気の変化を感じる能力があるそうですが、何らかの理由でそれが少しでも狂ってしまう可能性はないのでしょうか。広い海の中でルートを失ってさまよい、やがて体力が尽きるカメも多いだろうと想像されます。
gt059-4.jpg実は、アオウミガメが無事にオトナになれる確率は、400〜500頭に一頭とも、もっと少ないとも聞きます。なんて低い確率でしょう。でも、だからこそ、お母さんガメは100〜150個もの卵を一夏に4〜5回も産み落とすのでしょうけど。
運良く1000キロもの距離を越えて本州沿岸まで行くことができれば、稚ガメはようやく豊富な餌にありつけます。そこでゆっくり成長し、10〜20年経って1mもの大きさになると、さて、今度は生まれ故郷の小笠原へ帰る旅です。赤ちゃんの頃に比べれば、少しは容易になってるのでしょうか。
暖かい小笠原沿岸に帰ってくると、ここで交尾や産卵をして、また本州へ向かいます。そのあとの一生、この長い旅を繰り返します。
夏のあいだ、南島の砂の上で、扇池まで行き着けなかった稚ガメを見つけることがあります。かろうじてまだヒレを動かしてるカメもいれば、すでに息絶えてひからびてるカメもいます。生きてるカメは、水辺まで連れていきます。そのときは、なるべく扇池のアーチの外で放します。浜からそのまま海に放すと、すでに方向感覚を失ってる稚ガメが、また浜に戻ってきてしまうからです。
gt309-5.jpg残念ながら死んでいるカメには、せめてもと解説の題材になってもらいます。リクガメと違って手足がヒレに進化してること、親指の爪が外からも見えること、首は引っ込まないこと、卵の殻を内側から割るために鼻先が尖ってること、などなど。言葉だけではなく、小さなカメを実際にご覧になりながらのほうがわかりやすく、また、その動かぬ姿にカメの生息環境の厳しさも感じていただけるようです。
以前には、海洋センターの孵化場で孵った稚ガメを、夕方に砂浜で放流していました。夕日を浴びて100頭もの小さなカメたちが一斉に海を目指して歩いて行くさまは、心楽しいものでした。前後しながら全員が海に入ると、あっという間に、沈みつつある太陽の方向へと泳ぎ去ってしまいます。一頭でも多くのカメが小笠原に戻ってきますように。そう願わずにはいられない、子ガメたちの旅立ちでした。
最近はそんな夕方の光景は見られなくなりましたが、私たちの見ていない夜中、同じようにカメたちは動いているはずです。そして、まさに今も旅の途中にいるであろう赤ちゃんガメたち、どうか小笠原でまた会えますように。(TOMOKO)
posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 子ガメの冒険