2011年06月13日

★Tomocolumn 21「イルカのごはん」★

21-1.jpgご存じでしょう、小笠原沿岸域で見られるザトウクジラたちは、冬から春にかけて何も食べていません。彼らは、夏のあいだに、アリューシャン列島近海でオキアミやニシンを採餌しています。
外洋域では、マッコウクジラがダイオウイカをくわえたり囓ったりするのを目撃しています。ダイオウイカ以外にも深海性のイカなどを食べてるのだろうと想像されます。
それでは、イルカはいったい何を食べているのでしょう?
ハシナガイルカは、どうやら、夜、沖で餌を追っているようです。餌となってるのは、夜のあいだに深みから浮いてくるイカやサカナでしょう。明け方には採餌を終えて岸近くに戻り、日中は穏やかな入り江で休憩しています。午後になると、ハシナガたちの動きは徐々に活発になり、やがてまた、餌を捕るために沖へ泳いでいきます。
21-2.jpgでは、ミナミハンドウイルカはどうでしょう。彼らは、ハシナガのような日周行動はとりません。いったい、いつ、どこで、何を食べているのでしょうか。小笠原ですでに20年も彼らと付き合ってきましたが、実はまだ、その食性はよくわかっていません。
私たちも、彼らが何かを食べるところに遭遇することはあります。ドルフィンスイムツアー中、ときどき、何やらしきりに下を探すそぶりをするイルカがいます。何かいるのかしらとその横に並んで下を見ても、青い海の中には何も見えません。でも、そんなイルカがさーっと真っ直ぐ潜っていくと、次に上がってきたときにはサカナをくわえてます。私たちの耳には聞こえなくても、きっと音を出してエコロケーションでサカナを見つけていたのでしょう。
イルカは、わざわざ下からくわえて持ってきたサカナを、まるで私たちに見せつけてるようです。そのサカナを水中でちょっと放してみては、ふらふら泳ぐのを追いかけてくわえ直す、なんて、数回繰り返してます。2頭のイルカが、交互に、逃げるサカナを追いまわすこともあります。やがて、そんな遊びに飽きると、がしがしと噛みきって真っ二つにして、飲み込みます。
21-4.jpg餌となってるのはハギが多いです。動きが鈍くて、つかまえやすいのでしょうか。そのハギを、ふたつに噛みきるだけでなく、見事に皮をむいて食べることもあります。皮は美味しくないの?刀をくわえてる!?と驚かされたときのサカナは、ダツでした。銀色に輝く長い胴を、イルカが真横にくわえていたのです。鋭く尖った口先を噛み落としてから食べるのだろうという予想に反して、そのまま口先から飲み込んでしまいました。あんな長いものが胃の中に刺さらないのだろうかと、見ていて心配になったくらいです。
それにしても、イルカがそんなふうにサカナを捕まえて、時間をかけて食べるさまは、どうも遊び半分のようです。たぶん、彼らにとってはせいぜい「おやつ」程度なのでしょう。「食事」にしては、運動量のわりに餌の量が少なすぎるのではないかしら。
21-3.jpgいかにも「食事」らしいのは、トビウオを捕食してるときのイルカたちのさまです。トビウオが、水面上を飛んで逃げてます。その真下の水面下を、仰向けになったイルカが空中のトビウオを見ながらぴったりついて泳いでいきます。力尽きたトビウオが着水したところを、ぱくり。必死に逃げるトビウオが、飛びながら右へ左へとカーブを切っても、イルカはゆうゆうとその真下を泳いでついていきます。なんという正確さ。飛翔の名人のトビウオとはいえ、いつかは着水しなくてはなりません。どんなに長く飛び続けても、やがては下で待ち構えるイルカの口へ落ちていきます。なんという非情さ。あっちでもこっちでも、飛ぶトビウオと追うイルカたちが見えます。彼らがあげる白い水しぶきと水面を横切る黒い背ビレで、海が沸き立つようです。
その騒動に、カツオドリも集まってきます。彼らもまた、空中のトビウオを目指して、素早く突っ込みます。その動きもまた、お見事。追っていたトビウオを横からカツオドリにさらわれて、やむなく急ブレーキ、また別のトビウオを探しはじめるイルカもいます。空と海の両方から狙われるとは、トビウオにとってなんて厳しい状況でしょう。
21-5.jpg食い気がたってるイルカたちの動きは敏捷かつ獰猛で、いかにも肉食獣です。いつものあの、優しい眼をしてのんびり泳いでるイルカからは想像もつかない姿です。うかうかとヒトが水中に入ったら、目もくれないどころか、邪魔だっ!とぶつかってくるでしょう。でも、これこそが、彼らのあるがままの、そして何より生きるすべとして必要な食事の光景です。彼らは、水族館でトレーナーの言う通りに動いて口を開けていれば(死んだ)サカナが手に入るわけではありません。この海で、自らの体力と知力を使って餌を捕まえなければ、自身が飢えてしまうのですもの。生きていけないのですもの。もちろん、餌となるサカナたちのほうだって、途中から参戦してくるトリたちだって自分が生きるのに必死です。まさに、食うか食われるか、です。
私たちは誰の応援もできず、ただただ圧倒されて命を賭けた戦いを見守るだけです。
そしてきっと、私たちが知らないところで、実は別の餌をもっとたっぷり食べているのだろうイルカたち、その姿はもっともっと厳しく激しいものなのかもしれないと、想像をたくましくしているのです。(TOMOKO)
posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | イルカのごはん