2008年02月27日

★Tomocolumn 11「マンタの舞」★

19_03.jpg小笠原の海で、クジラ・イルカに次いで人気があるのはマンタ(オニイトマキエイ)でしょうか。
春には、二見湾の中で採餌してる姿をよく見かけます。口を大きく開けて体もぷっくりふくれあがり、水面上に盛り上がってます。餌を食べるのに夢中で、船が近づいても逃げません。舳先のすぐ前で、じっくり観察できます。
夏から秋は、岸近くの水面下にホバリングしてるのを見付けます。水にそっと入った私たちに気付くと、ひっくり返ってこちらを見上げます。光を受けて、白いお腹が輝きます。大きくヒレを羽ばたかせて悠々と泳ぐさまは、まるで水中を飛んでるよう。その優美さに見とれてしまいます。静かに静かに、海の深みに消えていくさまには、溜息が出ます。
でも、彼らも、いつでもこんなふうに鷹揚に泳いでるわけではありません。
19_04.jpgある夏の日、穏やかな入江で、ときならぬ波を見つけました。なんだろうと近付くと、なんと、1尾のマンタがもう1尾のマンタを追いかけているのです。水中の動きがあまりに早いため、水面に引き波が立ちます。海に入ると、すごいスピードでマンタが来ると思いきや、横を通過、その後をもう1尾のマンタが猛烈に追い上げてます。どうやら、逃げてるのが雌、追ってるのが雄です。あっという間に通過する2尾を見送ると、また、Uターンしてこちらにやってきます。どちらのマンタもすっかり目が吊り上がってます。口ビレは丸められて、白黒の棒状です。雌は、むしろ私たちの陰に逃げ込もうとします。雄はそれを追いかけざまに、「邪魔だ!!」とばかりにひときわ大きくヒレをびゅん!と振り下ろします。ひえぇ〜★※▽×☆!と、私たちは慌てます。何度目かには、苛立った雄が、向きを変えてあきらかにこちら目指して襲いかかってきました。19_02.jpg「お前らのせいでうまくいかないじゃないか!」と、その眼は血走ってます(に見えた)。この距離では避けきれない!と、私は小さく体を丸めてやり過ごそうとした、そのフィンにヒレが当たった!! いよいよ凶暴になるマンタにさすがに身の危険を感じて、這々の体で船に逃げこみました。
こんなマンタチェイスを、その後もたまに見つけることがあります。ときに、刺激しないよう注意しながら水中に入ってみるのですが、いつも、イライラしてる雄に八つ当たりされます。逃げる雌のほうは私たちの横をちゃんとすり抜けてくれるのに、雄は、まっしぐらにこちらに向かってきます。逃げ場がなくて水面上に跳び上がったこともあるし(スゴイでしょ)、やむなくぶつかっちゃった人もいます(チョットだけね)。
19_05.jpgまた、別の日のチェイス。やはり目付きがイッちゃってる雄が必死に逃げる雌を猛追してます。2尾が通過すると、水面はざざざっと波立ち、水中は泡で白く濁ります。逃げる。追う。まだ、逃げる。まだまだ、追う。
と、彼らの動きが停まった。・・・よく見ると。
水中で、2尾が縦に重なってます。上の雄が雌のヒレを口にくわえて、雌はややうなだれて、動きません。雄の両ビレだけが、力強く水をかいてます。まるでオルゴールの上の人形のように、2尾が揃って同じところでゆっくりと回転してます。何回も、何回も、くるーりくるーりと回ります。その動きの、なんて優しく、そして美しいこと。くるーり、くるーり。ゆったり、柔らかく。くるーり、くるーり。息をつめて見ている私の耳に、音楽が聞こえてきそうです。
19_01.jpgやがてしばらくすると、回転が停まり、ふっと2尾がほどけました。雄がくわえていた雌のヒレを離し、雌がそっと試すように、ヒレを動かし始めます。次第に、しっかり動かして泳いでいきます。雄は、ちょっと疲れたように、ゆっくりと、雌とは異なる方向へ泳ぎ去っていきました。チェイスで見せてたあの狂おしいほどの激しさは跡形もなく、穏やかで落ち着いたそれぞれの退場でした。
それにしても、いきものの中で、こんなにも美しい交尾シーンがあるとは。そして、鯨類ではないマンタにも、時に応じていろいろな顔があるのだと、つくづく感じ入ったのでした。



posted by Tomoko at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | マンタの舞